Vol.14 スクリーン可児
シルクスクリーン印刷発祥の地、郡上市で印刷所と技術の継承
継承の物語 つなぐストーリー
郡上市八幡町にある「スクリーン可児」は、シルクスクリーン印刷発祥の地で、25年以上営んできました。これまで、車検証入れの名入れや、習字の下敷きにマス目をつけたり、ビニール袋に印刷をしたりと、多様な業種に携わってきたそうです。
いまでは郡上市で数少ないフェルト印刷ができる印刷所です。
今回、郡上から日本中に広まった印刷技術を途絶えさせたくないという一心で、継業バンクを通して後継者を募集し、「独立心・研究心が旺盛で謙虚」な後継者に引継ぎが実現しました。
郡上市で数少ないフェルト印刷所
デザインした版の穴からインクを落とし、布などの生地に柄をつける、シルクスクリーン印刷。Tシャツやトートバッグなどの布製品や、木やビニール、フェルトまで、水と空気以外なら何にでも印刷できるとも言われています。
シルクスクリーン印刷の発祥の地と言われているのが、岐阜県郡上市。
戦後、新しい印刷技術として郡上市でシルクスクリーン印刷の工業印刷機が開発され、日本全国に広まったそうです。
そんなシルクスクリーン印刷発祥の地で、25年以上「スクリーン可児(かに)」を営んできた、可児光さん。スクリーン印刷の会社に勤めたのち、独立して仕事をやりたいと創業。それ以来、ひとりで経営してきました。これまで、車検証入れの名入れや、習字の下敷きにマス目をつけたり、ビニール袋に印刷をしたりと、多様な業種に携わってきたそうです。いまでは郡上市で数少ないフェルト印刷ができる印刷所です。
なかでも印象に残っているのは、愛知県名古屋市で開催された名古屋女子国際マラソン(現在はマラソンフェスティバル・ナゴヤ・愛知)で使われるゼッケンを印刷したときのこと。何万枚と印刷をしたそうで、テレビに映る選手たちが着用するゼッケンを見たときには、やりがいを感じたといいます。
身近な日用品から、マラソン選手が着用するようなゼッケンまで、仕事を通して幅広い分野に携わってきました。
いっぽうで、スクリーン印刷の難しさは、指定された色調を出せないときだと話します。
油性と水性とのインクの違いや、生地の素材によっても色が変化するのだそう。
納得できる色を出す技術を習得するまでに時間はかかりますが、試行錯誤しながらものづくりをすることは、スクリーン印刷のおもしろさだといいます。
シルクスクリーン印刷の技術を継いでほしい
譲渡しようと思った理由は、「シルクスクリーン印刷の技術を伝承したいから」。後継者不足のため店をたたんだ同業者もいたそうで、可児さんも1、2年の間に廃業することも検討していました。
しかし、郡上から日本中に広まった印刷技術を途絶えさせたくないという一心で、継業バンクを通して後継者を募集することを決めたそうです。
現在も継続的に仕事の発注はあり、取引先は引き継がれますが、新規の取引を断るなど廃業に向けた事業の整理をしていたため、継業後は、新たな取引先の開拓やネットでの受注などが必要になります。
印刷をとりまく環境は日々変化しているものの、IT技術と掛け合わせるなど新しい視点を取り入れれば、事業を拡大する可能性はあるのではないかと話します。
継ぎたい人がいた場合は、座学で学んでもらうより、現地に足を運んでもらい実際に印刷をして学んでほしいそう。
「覚えるのには時間がかかると思いますので、しっかりとしたマニュアルはないけれど、付き添って教えるつもりです」
可児さんが継いでもらうことを想定して話す際、「わたしも一緒に勉強をしていきたい」と話していたのが印象的でした。
学び続ける姿勢を持ち、研究心が旺盛な人に、郡上で受け継がれてきたスクリーン印刷の技術を継業してほしいと思います。
譲渡概要
事業者名 |
スクリーン可児 |
事業内容 |
スクリーン印刷業(売上:300万円) |
所在地 |
岐阜県郡上市八幡町相生1613 |
継いでほしいひと |
独立心・研究心の旺盛なひと、謙虚なひと |
譲渡する資産 |
機材一式、取引先 |
譲渡条件 |
無償譲渡 土地建物は賃貸のため、契約を引継ぎ スクリーン印刷技術は、事業譲渡後に可児さんから無償で教えていただくことができます。 |
継業までの流れ |
①オンライン面談
②現地体験・面談
③採用
④移住を伴う場合は住居探し
⑤事業譲渡
⑥技術の習得
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補助金情報 |
- 【郡上市事業承継支援事業補助金】
- 市内の既存店舗等の事業を承継しようとする家族承継者又は第三者承継者の、改修に係る経費に対して補助金を交付します。(詳しい要件についてはホームページをご確認下さい。)
補助率・限度額:補助対象経費の2分の1以内とし、50万円
- 【郡上市UIJターン就職奨励金】
- 郡上市内の企業が求める優秀な人材や事業を承継する人材を確保するとともに、市内への定住の促進を図ることにより人口の減少を抑制することを目的として、UIJターン者及び新規学卒者に対して奨励金を交付します。
奨励金:対象の方には、10万円を交付
- 【新商品等開発支援補助金制度】
- 市内の中小企業者等が新商品等の開発を行う場合に、経費の一部を次のとおり助成する制度。
補助率・補助額:補助対象経費の2分の1以内とし、50万円
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